【恋愛小説】『ラストは皆、死ぬ15』・竜頭蛇尾
2006年5月31日(水) 先ず最初に困ったのは、彼女にどう話かけたらよいか?という事だった。何て言えばよいのだろう?他人じゃあないのだが、改まって話すのは初めてみたいなモノだ。彼女の方も黙っている。いかん、何かを話さねば、少々テンパり気味に出た言葉は・・・
「は、はじめまして。」
だった。
「・・・・・・・・・。」
彼女の方も黙っている。完璧に言葉を間違えた。
「あ、いや、はじめましてってのは・・・」
「はじめまして。」
「え、ええ?」
「そう言えば、ゆっくり話したのははじめて、だよね。」
「ああ、うん、そうだね。」
「セックスは、いっぱいしたけど。」
体が硬直する。いきなり確信を突かれた。瞬時に目線を落としていた。だが、声に怒気は感じない。だが、女ってのは、こんな時に残酷なくらい冷静な声を出せるモノなんだ。だが、俯いている訳にもいかないから、顔を上げる。彼女は、うっすら笑みを浮かべていた。ちょうど、小悪魔という言葉があてはまる感じだ。もしくは、猫が笑ったとしたらこんな感じだろうか。大丈夫、怒ってない。多分、怒ってない。怒られる理由がない。
しばらく沈黙した後に、今度はこちらから聞き返す。
「そう。そうなんだ。僕ら、こんな関係だけど、どんな関係かよく分からなくて、だから、今日話そうと思って。」
「うん。」
「その、なんだろ、僕はこの春に大学を出て、今はハローワークで就職活動をしています。」
一番、聞きたい事を聞けてないような気がする。
「私は、大学生です。3回生。でも、フリーターみたいなモノです。」
「大学生だったのか。」
「大学生じゃあなかったんですね。」
変な感じだ。その後、僕達は、出身地であるとか、趣味だとか、大学時代のサークルだとか(彼女は在学中だが)、そんな、まるで初めて会って、自己紹介をするような感じで、しばらく談笑した。本当に不思議な感じだ。だが、そんな時間が楽しくもある。
「本当に不思議だね。」
「そうだね。」
「私達、もう、ねえ?」
「うん。」
「なのにまだ恋人じゃないみたいな感じで。」
「へ?」
「知り合ったばっかりのような感じで。」
「うん。」
「・・・私の事、好きですか?」
「・・・・・・・・・。」
そこですぐに答えられかった事が悔やまれる。もしくは、「僕の事は好き?」とか聞き返さなかった事も。体感時間では物凄く長く感じたのだが、多分、それは一分以内で、彼女は伝票を手に取り、「帰るね。」と言って、レジに向かった。僕は、その間、全く動けなかった。言葉に詰まってしまった事、彼女に支払いを許した事、その事が大きく圧し掛かる。自分が男であった事を認識させられる。生物的じゃあなくて、社会的にとでも言うのだろうか?
何か前に進んだのか?何か解決したのか?彼女の事、何か分かったのか?
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