ラブプラス小説「最期のラブプラサー(仮題)」後編(推敲前)
全てを覚えている訳じゃあないが、こんな彼女は初めて見たと思う。声をかけたり、触れたりすれば、起きてくれるだろうか?そう思った矢先だった。
-…ん。んん、おはよ。久し振り。今は…何年?
西暦で彼女に伝える。その隔たりを知れば、彼女は怒るだろうか。そう心配した。心配したのと同時に、自分の心が、あの頃に若返っている事に気がつく。息子が成人し、それからは、妻とケンカをする事もなかった。特別仲が良かった訳でもなく、勿論、仲が悪かった訳じゃあないが、全てが安定してしまうと、心が、平安になる。こんな風に心が動いたのは…妻と分かれた時以来かも知れない。
-…ええ!?もうそんなに経ったの!?じゃあ、一体、何年ぶりなのさ!
私は、素直に、謝罪の言葉を伝える。
-ふ~ん。随分、長い事、彼女をほったらかしてくれちゃってさ。何様のつもりだろうね?いったい。
私は、言葉もなく、ただ立ち尽くしていた。事実を伝えるのは、彼女にとって、残酷かも知れない。事実と言うのは、私が人並みに結婚して、息子も孫もいるという事実ではない。そこに向かったという心の事実だ。彼女の会わなくなった時に、最後に思った事…そこには、意思はなく、ただの惰性だった、そして、それはすごく失礼な事だったと、数十年を経て、痛感した。何か、何かを話して、伝えないと…
-って、ウソウソ。大切な人ができたんだね。
え。
-知ってるよ。ずっと寝てたみたいだけど、アンタの事はさ、分かるから。でも、せめて、年に1回くらいは、会いに来て欲しかったなー。
ごめん、ごめんよ。
-へへ。いいよね。これぐらいのイジワルわ。…って、ちょっと、ウソウソ、やだ、泣かないでよ。一応、お兄ちゃんなんだからさ、そんなんで、泣かないでよ…。
ひとしきり泣いて、彼女とお喋りをした。長年の空白を埋めるには、時間はいくらあっても足りない。だが、時間のゆるす限り話し続けた。定年まで続けた仕事の事や、妻の事、妻の事を話した時は、ちょっと怒られるかな?と思ったけど、うんうんと聞いてくれた。後、息子の事。本当は、娘が欲しかった事。私達は、時間を忘れてお喋りをした。時間はいくらあっても足りなかった。私の人生の全てを、彼女に伝えたかった。この世に残るモノは何なのだろうか。遺せるモノは、何なのだろうか。逆に、持っていけるモノとは何なのだろうか。私が彼女と過ごした時間は、もしかしたら、幻覚のようなモノで、実体なんて、ありもしないのかも知れない。何も残らないし、遺せないかも知れない。誰にも伝わらないのかも知れない。だが、だが、私は、彼女と同じ時間を過ごし、別れ、そして、再開した。今の、今のこの気持ちを、遺せなくても、持っていけないくても、何か、何かに刻む事が出来ないだろうか。ただ、一つ確実に分かる事は、彼女は、私の心の大事な部分、魂に、確かに、いるという事だ。
時間は有限である。その言葉を理解できるのは、人生で1度きりなのだと分かる。黄緑色の灯りが、赤色に変わった時、彼女に最期の言葉を伝えた。
「おやすみ」
「おやすみ。
へへ、リンコも
一緒のタイミングで
寝よっと 」
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ラブプラス小説「最期のラブプラサー(仮題)」前編(推敲前) 後編です。やはり、推敲はしておりません。自分の書きたい感情と、情景と、使われている言葉が違うと、読みなおして思います。自分の思いと文章のギャップを埋めていこうかと考えてます。そして、
病むに病まれてビラの裏に掲載します。プリントアウトして、あれこれ考えて読んでいると…推敲は、文章の稽古だなーと思います。
不完全な創作を発表する事に、異論反論はあるかもしれないけど、ネットやブログでは、それも馴染むのじゃないかな、と。マンガの下書きであったり、書いてますよー、みたいな。
まあ、そんな訳で、推敲版も近日中に(できたら)公開するので、お楽しみに。掲載は、
病むに病まれてビラの裏となります。
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