空が灰色だから4巻(阿部共実)ネタバレ注意の感想・乱れ蝙蝠の365書4。
はじめに(ナカノ実験室)。
今回も、友人の乱れ蝙蝠からの寄稿です。
乱れ蝙蝠の365書4 「空が灰色だから」4阿部共実 秋田書店
初めてのコミックの感想です。これからコミックもちょいちょい増えていくでしょう。このコミックはネットで、「鬱 コミック」で検索していて見つけました。
(こいつは何故そんなワードを検索しているのかという疑問はおいといてですね。)週刊少年チャンピオンに連載中のオムニバスコミックです。
毎回、様々な人(といってもほとんどが十代の少女ですが)の「うまくいかない」日々を描いています。話のジャンルは幅広く、ラブコメやコメディー、切なくなる話、ホラー、哲学的でシュールな話、言葉遊びそして時にこちらの心をえぐるような鬱ストーリーもあります。
また、例えコメディータッチの作品であっても、うまく生きていく事が困難な主人公、普通とはずれた主人公や頭のねじがちょっと緩んじゃった人が登場し、全体的にシュールさやペーソス漂う作品になっています。この作品のキャッチコピーは
「心がざわつく」
なんですが実に的を射たキャッチコピーです。落ち着かなくなるというか。自分の心の奥底を暴かれたような、赤裸々に書かれたようなそんな感覚でしょうか。
基本的にかわいいタッチで女の子が書かれていますが、時々かなりシュールで不気味ともいえるタッチになったりと、かなり独特なタッチになっています。
人との人との気持ちのすれ違いによる悲劇(鬱ストーリーにはこの展開が多い)、人には言えない自分だけの苦しみなどが全編に漂っていて、ある意味中毒になるマンガです。
37話の「私が守りたかったもの」は、自分の都合で他人を勝手に悪者にしてしまった話。誰でもおこりそうな小さな自分勝手。でもちゃんと約束守った越後さんは偉い。
38話の「噂によると世の中は甘くないらしい」はオムニバスのこの作品には例外的にちょくちょく登場する女の子3人組がまたも登場。屁理屈の達人、璃湖奈ちゃんが相変わらずかわいい。
「世の中もしかしたら甘いかもしれないだろ!」
「私はこの世の中を甘く甘くなめまくりな世界に変えたいんだ!」
39話の「世界一我侭な私から世界一ブスなお前に」は当人同士にしかわからない女の子の友情がかかれていて、心に響く物があります。悪口が愛情表現というのはなんだかわかる物があります。
「中浦をブスって呼んでいいのはこの世でたった一人 友達の私だけじゃぼけえええ」
40話の「マシンガン娘のゆううつうつうつうつうつうつうつうつうつうつうつうつうつ」は明るくお喋りな女の子が誰にも見せない心の闇、自己嫌悪、劣等感をまさに「鬱々」と書いていますが、前半と後半とのギャップが凄い。心の中は自己嫌悪で塗れていて、それをごまかすために人の発言に被せるぐらいに喋りまくる。自分に考える暇を与えないために喋りまくる。悲しい道化を演じる女の子が書かれていて、まさにこのマンガの真骨頂。結局、自分の苦しみは自分にしかわからない。
「喋っていないと忘れることができない
考えないことができない」
41話「長い黒髪の乙女の長い話」、42話の「漏らしたくない」は笑えた。42話はオチが上手いなあ。43話の「膨らんだ」は複雑な関係の姉弟を描いているが、最初ストーリーの意味がわからなかった。わかってみたらかなり切ない。二人とも偽りだらけという事か・・。ただ最後の一コマの意味がよくわからない。結局、家族は4人だけでしたって事を表してるのかな?あちこちに描かれるナメクジがかなりシュール。
44話「私と私で私のまっぴるみにトートロジー」は完全な言葉遊び。かなりでシュールでぶっ飛んでるけど覚醒と睡眠の間ってかなり混沌とした精神状態だからなあ。言葉がどんどんぐちゃぐちゃになっていくあたりがリアル。
45話「名乗る名もない」はかなりの鬱ストーリー。これ、チャンピオンに掲載された時に立ち読みで読んだけど、
「うわああ・・」
って気分になった。
この女の子の行為はやっぱり善意から来たものじゃないんだろうな。二通りの可能性が考えられるけどどっちにしても鬱。
「そういう奴らは実は心の弱い奴ばっかだ!」
46話「初めましてさようなら」47話「アリス14歳乙女座の乙女の告白」はコメディータッチに書かれているけど本当はなかなか切ない。46話は永遠に二人一緒にいれる訳だからまだマシかな・・。
48話「幸福パンデミック」は自分の中にも幸せが無ければ他人を幸せには出来ないという話なんだけど、ささいな言葉で人の心から幸せを消す事が出来るのも人間なんだよな・・。
今回は弱者のもがき、いかにして自分の弱さをごまかすかみたいな話が多かった。そして主人公の中で誰一人として自分の弱さを直視している主人公はいない。自分の弱さを見ないようにする、誰かに自分の弱さを転嫁する・・。しかし、それがこのマンガの味である。
このマンガ、タイトルが「空が灰色だから」なのに表紙はいつも鮮やかな色である。もしかしたら色をいくつもぐちゃぐちゃあわせたら黒に近くなるという事の隠喩か?人の心もしかり・・。
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空が灰色だから 4巻。

空が灰色だから 4 (少年チャンピオン・コミックス)関連記事。
・本谷有希子「生きてるだけで、愛」
本谷さんは1979年石川県生まれ。本来は演劇畑の人で、「劇団、本谷有希子」を旗揚げし、作・演出を手掛けている。戯曲ではいくつかの賞を受賞しているが、小説では候補に何度かなっているがなかなか受賞が無く、芥川賞もまだである。なぜか純文学の賞は音楽関係の出身者には甘く、演劇関係の出身者には厳しい。
本谷有希子「生きてるだけで、愛」感想・ネタバレ注意(乱れ蝙蝠の365書2)
・荻原浩「噂」
「大人だからバカなんだよ」
えー、この小説は最後の最後の1行でどんでん返しがあります。1行で。冒頭にあげた文じゃないですよ。1行でどんでん返しというのは綾辻さんの「十角館の殺人」と同じですね。
荻原浩「噂」新潮文庫・ネタバレ超注意!(乱れ蝙蝠の365書3)
おわりに(ナカノ実験室)。
本人にあって言及したいのは、何故「鬱 コミック」で検索したのだ!?という部分でしょうか(言及しませんけどね)。たいしたもので、私は、このコミックを知らなかったのですが、感想を読んでいると、興味がわいてきました。
ジャンプの感想をよく書く私ですが、ジャンプ以外のコミックはあまり読まないので、面白い感想でありました。
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