感想・ファーストプライオリティー(山本文緒)乱れ蝙蝠の365書9。
はじめに(ナカノ実験室)。
今回も友人の乱れ蝙蝠からの寄稿です。
乱れ蝙蝠の396書9山本文緒「ファーストプライオリティー」角川文庫
「いやなもんはいや。許してくれなんて一度だって頼んでない。おかげさまで生きてるわけじゃない。可笑しいときだけ私は笑う。こんな簡単なことだったのかと思うと、楽しくてにやけ笑いがおさまらなかった。」
山本文緒さんは、1962年神奈川県生まれ。OLを経て、ジュニア小説でデビュー。その後、一般文芸にも進出。主に大人の女性心理を書いた短編で有名。私生活では離婚や鬱病を経験している。この短編集の最後の短編「小説」は、離婚した主人公が私には小説しかないと決意する話だが、おそらく自分自身の事を書いたんだろうな。
長編「恋愛中毒」で吉川英治文学新人賞、働かない女性達のひねくれた心理を書いた短編集「プラナリア」で直木賞受賞。
長編「ブルーもしくはブルー」、「群青の夜の羽毛布」短編集「絶対泣かない」「ブラックティー」「アカペラ」等著書多数。
この短編集は31の短編が収録。いずれも31歳の女性が主人公。それぞれの主人公が持っているこだわり、趣味、価値観などのその人にとっての一番大事な物を描いている。人生は決まった目的等が無い以上、誰だって自分にとって一番大事な物を見つけつくっていかなければならない。例え人から全く理解されなくても。
なんというか、価値観が揺らぐ瞬間や何かにすがらなければ生きていけない人の姿等が書かれていて全体的に人生にたいする倦怠感が沸いて来る。怨念が感じられる「手紙」やかなりの気持ち悪さが感じられる「初恋」等不穏な気持ちになる話も多い。
いずれの短編もすごく短く、劇的な展開がある訳ではない。誰の人生にもある自分の価値観を見つめ直す瞬間が書かれている。人の人生は短編小説の集まりだ。
なんせ31歳の女性が主人公の話だから、いまいち理解が及ばなかったりピンと来ない話も多かった。
不倫や中絶とかの話もあって潔癖なとこがある私としては眉をひそめながら読んだ。中でも自分が「名器」である事にプライド持って、しまくっていた女性が一年間セックスしない決意をする話「禁欲」はかなり引いた。さすがに理解できません・・・。
ぶっちゃけ、読んでますますリアルの女性と付き合う気が失せてきた。それだけ生々しい話が多い。
その中でもハートウォーミングな「庭」、主人公の女の人が可愛くちょっと萌えた「ジレンマ」等の話にはホッとした。
人には全く理解されなくても自分の好きな道を貫け、人の生き方を何かの力で変える事は出来ないという強いメッセージを感じる「空」等には人生にたいする圧倒的な肯定が感じられた。短編として一番
「上手いな」
と思ったのは「安心」か。家庭間の安心、調和が逆に不安を呼ぶあたりが皮肉。誰の人生にもありそうな話だが、奇想天外な内容の短編じゃなくてこういう短編の方が書くのが難しいかもしれない。
ちなみに私が一番共感した話は「偏屈」です。
私も相当、偏屈な人間なのですごく共感出来ました。バイトの人がやめる時とか 新しく入った時とか送別会とか歓迎会とかあるけど、まず私は行かない。金出さなきゃいけないし。酒飲めないから周りが酒飲んで騒ぎだすと
「うるせえな」
とイライラしてくるし、だいたい誰がやめようが誰が入ってこようがどうでもいいわ。まさしくこの短編みたいに、関係ない俺を巻き込むな と。
ちなみに私のファーストプライオリティーは何だろうか。やっぱり「本」か。ぶっちゃけ本読まない人の気持ちが全くわからない。こんなに面白い物があるのになぜ楽しまないの?と純粋に不思議。私は今までの人生で映画やドラマを数える程しか見た事がないが、私には映像文化よりも活字の方がとっつきやすい。私は映画を見るのが苦手なのだ。これは後で別記事にするかもしれない。
今の私だったら「アニメ」でもいいかも。どっちにしろオタクだわ。
しかし、31歳というのは自分の人生を見つめ直さざるを得なくなってくる年齢なのだろうか。中途半端な年齢というか。私にはまだわからない、と言っても後3年後だけど・・。
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おわりに(ナカノ実験室)。
まぁ、乱れ蝙蝠よりも年上な私は若干アンニュイな気がしましたけど、31歳が主人公の31の短編って興味深いですね。31を逆にすると13で『めだかボックス』なんかを思い出した私がおりましたが…。
31歳…確かに、人生の一つの転換点とも思えます。
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