帰ってきたウルトラマン31話感想「悪魔と天使の間に…」ネタバレ注意(ウルトラシリーズ名作選6:乱れ蝙蝠)
はじめに(ナカノ実験室)。
お久しぶりに友人の乱れ蝙蝠からの寄稿です。
ウルトラシリーズ名作選6帰ってきたウルトラマン31話「悪魔と天使の間に・・・」
「人間の子は人間の子さ。天使を夢見させてはいかんよ。」
このシリーズもだいぶ久しぶりになってしまった・・。これからは定期的にやっていきましょう。
帰ってきたウルトラマンには俗に 「11月の傑作選」と呼ばれる作品群がある。その通り、11月に放送されたエピソードがみな完成度が高い作品なのでまとめてこう呼ばれるのだ。ただこの呼び方は「帰ってきたウルトラマン」否定派の人がした物で、「帰ってきたウルトラマン」は駄作だがこれらの作品は特別!!という意味で「11月の傑作選」と呼び出した物で、そのため今はあまりこの呼び方はされない。ただこれらの作品が名作なのは間違いない。
今回の31話「悪魔と天使の間に・・・」
はその第1弾。
MATの伊吹隊長の娘、美奈子が友人の風間輝男を連れて基地に見学に来た。
輝男少年は聾唖の少年で言葉がしゃべれない。慈愛精神溢れる美奈子は聾唖の輝男を不憫に思い、友達になったのだった。
基地を案内する郷秀樹(ウルトラマン)
しかし、輝男少年はテレパシーを使って郷だけに語りかけてきた。
「ウルトラマン、お前に会うために隣の娘を利用して今日やっとその目的を達した。私の指命はお前を殺す事だ。我々ゼラン星人はお前を葬った後この地球を侵略する。私はプルーマという怪獣を連れてきている。しかしこれは単なる囮だ。お前はウルトラマンとなりこの怪獣に勝つだろう。そしてウルトラマン、その時がお前の最期だ。わかるか。プルーマに勝った時お前は死ぬのだ。」
ここで、目を青く光らせてテレパシーをおくる少年の顔を魚眼レンズで写したカットが怖すぎ。
激昂した郷は輝男少年を捕まえようとしたが周りの警備員達に阻止される。
「地球人は子供を大切にしてくれるな。ハハハハハ。」
美奈子に連れられて逃げながらテレパシーで郷を嘲笑うゼラン星人。
地下室に監禁された郷。やってきた伊吹隊長に
「お嬢さんをあの少年に近付けておく事は危険です!」
と言うが伊吹隊長は全く信じなかった。
「お嬢さんが危険な現実にさらされてるとしたら!」
と言うも、伊吹隊長は子供達にとっての現実は何物にも汚されない美しい友情だと言って全くとりあわなかった。
そして学校の地下からプルーマが姿を現す。MATが迎撃に向かうも輝男がわざとプルーマに捕まったために手出しが出来ない。プルーマは再度地下に逃亡した。
病院に入院した輝男のもとにきた郷を輝男、ゼラン星人が嘲笑う。
「どうした郷。ウルトラマンになるのが怖くなったのか。明日はこの病院の鼻先に出してやるぞ。」
「ウルトラマンになる前に貴様を殺してやる!」
激昂した郷は輝男の首を締めるが医師や
看護婦に止められた。
伊吹は郷が頭がおかしくなったかと思い、郷の精神鑑定のカルテを読む。
このへん今なら問題になりそうな描写だな。
郷を詰問する伊吹。
「私はあの子を何かの偏見で人をだましたり疑ったり差別したりするような娘には育てたくないんだ。」
そんな伊吹に郷は何も弁解はせず
「明日、あの病院の近くに怪獣が出て来るはずです。もしこの予言通りに怪獣が現れたら僕の言う事を信じて頂けますか。ウルトラマンがピンチに陥ったらあの少年を捕まえて下さい。」
翌日、果たしてそのとおりに病院の近くにプルーマが現れる。郷は病院を守るためにウルトラマンに変身しようとするが、ゼラン星人の言葉に躊躇する。しかし、
「こうなったら一か八かだ!」
とウルトラマンに変身。プルーマは尖った頭頂部からの突進や口からの破壊光線でウルトラマンを苦しめる。スペシウム光線も効かない。
ウルトラマンは万能武器ウルトラブレスレット(18話で強敵ベムスターに負けたウルトラマンにウルトラセブンが与えた万能武器)を変形させた光のカッター、ウルトラスパークでプルーマの頭を切断。切り口から緑の体液を流しながらプルーマは奇しくも墓場の横に倒れ、泡になって消滅。
ウルトラマンはウルトラブレスレットを普段付けている左手首に戻そうとする。しかし、なんとウルトラマンのコントロール下にあるはずのウルトラブレスレットがウルトラマンを襲い出した!針状の光線、楔型の光弾、リング状の捕縛光線、光のカッターと次々に形を変えて襲いくるブレスレットに攻撃され、皮肉にも自分の武器で絶体絶命に陥るウルトラマン。
「しまった・・ブレスレットがコントロールされている・・」
これがゼラン星人の作戦だった。ウルトラブレスレットがウルトラマンの手から離れた隙をついてブレスレットをコントロールしようとしたのだ。プルーマはウルトラマンにウルトラブレスレットを使わせるための囮だった。
その様子を見た伊吹は郷の言葉を思い出し、輝男を探す。
病院の霊安室から聞こえてくる機械音・・・。そこにはランドセルに偽装したコントロールマシンを操る輝男がいた。
「何をしているんだ!」
伊吹の言葉に輝男は目からの青い怪光線で攻撃するが、それをかわした伊吹は、銃でコントロールマシンを破壊し、輝男の喉を打ち抜く。
「なぜ・・」
といいたげな表情で喉から血を流しながらヨロヨロと伊吹に近付く輝男。
思わず後ずさる伊吹。トラウマになりそうなシーン。
事切れて倒れる輝男。伊吹がその体を抱えあげると、その顔は天使のような少年の顔から、醜悪なゼラン星人の物に変わっていた・・・。
ウルトラブレスレットはウルトラマンのコントロール下に戻り、ウルトラマンは危機を脱した。
事件は終わり、神学校から帰る美奈子を出迎えるべく待つ伊吹と郷。
「僕ならあの少年は遠い外国に行ったと言いますね。お嬢さんの心を傷つけないためにも。」
「いや、やはり事実を話すつもりだ。人間の子は人間の子さ。天使を夢見させてはいかんよ。」
父親を見つけて笑顔で駆け寄ってくる美奈子の姿でこの話は終わる。
この後、真実を伝えられ大きなショックをうける少女の姿を 想像せずにはいられない。だが、もしかしたらこの天使にしか見えない少女にも悪魔は潜んでいるのかもしれない。
美奈子の美しい心は、悪魔のような宇宙人の策略に利用され裏切られた。子供番組でありながら、世の中には人の善意を裏切り、踏みにじる悪魔のような奴がいるという現実をしっかり書いている。
人間は天使と悪魔の間で触れるフラフラとした存在だ。人間の善意を信じようとする事は大事かもしれないが、それに固執してしまうと現実が見えなくなる。伊吹隊長は娘を差別するような人間に育てたくないと言って、娘の気持ちを尊重しようとしたが、そのため隊長でありながら宇宙人の策略を読めなかった。皮肉な話だ。信じるという行為は尊いように聞こえるかもしれないが、ある意味では思考停止であり相手の事を見ていないと言える。
それに障害者の少年が悪辣な宇宙人な訳ないという考え方に欺瞞が見える。障害者は美しい者なんて健常者の逆差別だ。
24時間テレビとかでよく障害者の人が必死に努力してなんかをなし遂げようとするシーンなんかが流れるが、私はあれが嫌いだ。障害者はなんか必死に頑張ったりして美しく純粋でなければならないなんて考えが透けて見える。そんなわかりやすい美談を求める連中にはへどが出る。私捻くれてますかね?
嫌いといえば、よくドラマとかで残虐な犯行をした犯人に主人公が、
「これが人間のやる事か!」
というシーンがあるが、何をかいわんや。人間だからそういう事をするんだよ。むしろ逆だろ。どんな尊い事もどんな醜い事も出来るのが人間だ。その二面性を理解しなければ人は愛せない。我々人間は人間でしかない。天使では無い。
裏切られたといえばウルトラマンも自分の武器にしっぺ返しをくらっている。興味深いのはゼラン星人にコントロールされたウルトラブレスレットが、普段ウルトラマンが使っている時より明らかに強力だった事だ。普段ウルトラマンはウルトラブレスレットの力を抑えて使っているのかもしれない。もしかしたらウルトラマンもウルトラブレスレットの力を恐れているのかも。
自分の使っている物にしっぺ返しをくらい、その力に翻弄される姿は人間を皮肉っているのかもしれない。
ウルトラ怪獣プロファイリング
・囮怪獣 プルーマ
ゼラン星人がウルトラマンにウルトラブレスレットを使わせるために連れてきた怪獣。そのためスペシウム光線が効かないようにされている。雪ん子のように頭から傘を被ったように見えるデザインが特徴。背中から見ると大きいピーナッツの殻を背負っているように見える。やたらと両手を広げたりすぼめたりする。牙には猛毒があるらしいが劇中、描写無し。ゼラン星人は「プルーマー」と言っているように聞こえるがどっちが本当?
・宇宙怪人 ゼラン星人
帰ってきたウルトラマン初の侵略宇宙人。かなり狡猾な宇宙人。本当の姿は一瞬しか写らないが、実に醜悪な顔。すぐ後の33話に出て来たメイツ星人にほとんど改造無しでマスクが流用されているが、どっちもほとんど画面に登場しないのでノープロブレム。この33話はかなりの問題作。後で紹介します。
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おわりに(ナカノ実験室)。
後半の社会的な文章にドキっとしました。ちょっと前のあの事件に触発されてかな…とお思ったりしましたが…。
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