ブログ小説・恋「01別れ」
シェアブログ1に投稿 もう会えなくなる。そう思うと、最後に、最後かは分からないけど、もう一度会いたいという気持ちは、抑える事は出来なくなった。だから、電話をした。上手に誘い出すとか、口説くとか、そんなのではなく、自分の声で「会いたい」と。覚悟の力なのかも知れない。だから、今、彼女と一緒にいる。
「久しぶり。」
「そうですね。」
「去年の春、俺が引退した時、以来かな?」
「だと思います。」
彼女の前で、僕の一人称は「俺」だ。彼女も緊張しているのかも知れない。会話がぎごちない。僕の真意をはかりかねているのか?それとも、これがブランクというモノか。
「どう?サークルの方は?」
「先輩がいた頃と変わりませんね。ヤルキのある人はあるし、ない人はないですし。」
「変わらないな。」
「あ、でも、先輩みたいな、訳の分からない、ワガママな、何だろ?変なヤルキを持った人は、いなくなりましたね。」
「それ、誉めている?」
だが、嬉しい。
「誉めてますよ。」
「そう?あ、でも、ありがとう。そうか、後輩から見たら、やっぱり、変にみえたんだな。」
「すごく変でしたよ。」
なんだ、まだ話せるのじゃないか。この後は、何でもない話が続いた。前置きじゃない。話していて楽しかった。これでよいのじゃないか?とも思えた。だけど、今日、こうした目的、彼女と会った目的、それを果たすために振り切った。
「ちょっと込み入った事聞いてよい?」
「はい。何ですかぁ?」
彼女は、この後の僕の発言は予想出来ていないらしい。もっとも、それが普通だ。
「佐々木とは、まだ、付き合っているの?」
「…。」
沈黙があった。
「…今日、呼んだのは、このためですか?」
「うん。」
「…別れました。」
「…そう。」
実は、彼女が佐々木とは付き合っていないという事は知っていた。佐々木本人から聞いていたからだ。だから、この質問は卑怯だ。前置きでしかない。
「…じゃあ、もういいですか?」
「いや、待って。」
「まだ、何かあるんですか?」
多分、彼女はこの後の事は、予想しているだろう。
「俺、君が………好きだ。」
「………。」
再びの沈黙。仕方がない事だろう。
「…卑怯ですよ。こんなタイミング。」
「分かってる。」
「分かってるって…。」
「だけど一つ、一つだけ教えて欲しいんだ。俺、佐々木に会ったんだ。だから、もう別れてるってのも知ってた。でも、どうしても、最後に、俺、卒業するから、聞いておきたくて…。」
「………。」
自分では、冷静だと思っていたけど、一気にまくし立てていた。
「…何ですか?」
「今、俺と佐々木と、どっちが好きか、それをを教えて欲しい。」
「………。」
彼女と佐々木は、もう4ヶ月も前に別れている。だが、言葉で聞かなくても、分かってしまう事もある。
「…そう。」
「…ごめんなさい。」
「いいよ、謝らなくて、いや、こっちこそ、ゴメン。でも、佐々木も好きだってさ。一昨日聞いた。別にキミらの幸せを願う訳じゃないけど、もう、大丈夫じゃないかな。話して理解し合えない事はないって。」
「………。」
彼女は、明らかに困っていた。僕の真意をはかりかねているのだろう。
「聞きかたかった事はそれだけ。じゃあ、また。」
「え、あ、サヨウナラ…。」
去り方まで卑怯だった。最後の最後まで卑怯だった。自分でも、卑怯だと分かっていたけど、それを気にしないくらいは、強くなったのだと思う。しかし、やはり、それでも彼女が好きなのは、佐々木だったという事は、納得しようと思っていたのだけど、それでも、ぐじぐじと心の中で、膨らみ、萎み、這いまわる。だが、涙は出なかった。
end
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